報告案の行方

この間、8月末の八王子セミナーハウスでの書評報告の準備を進めていた。著者の発想や視点が自分とは大きく異なるため、ノートを取るのに時間を要したが、お盆前には報告用スライドの原案を作成することができた。

読み進めて気付いたのは、著者の立論の根底には『資本論』の労働力商品概念への疑問があり、その問題意識は宇野派内部で従来から展開されてきた議論と重なる部分が多いという点である。そうであるなら、労働力商品概念に対する疑問に、より踏み込んで応答する必要がある。

秋の全国学会分科会報告では、資本価値の姿態変換という視点から労働の多様性・階梯性を明らかにすることを主旨としており、労働力商品概念への言及は価値移転・非移転問題を考えるための序論的位置づけにとどめていた。しかし、そもそも労働力商品概念を用いない議論が一定の広がりを示しているとなると、この問題自体をより深く検討する必要がある。

実際、昨年8月22日の第52回仙台経済学研究会での報告「資本価値の姿態変換と労働の多様性」では冒頭で次のように概要を示していた。

 数理マル経の影響により、搾取論が「マルクスの基本定理」へと収斂し、投下労働価値説的説明が省略される傾向がある。

 また宇野派でも、労働力商品概念への疑問から労働力商品の価値規定を否定し、賃金を現象論的・価格論的に捉える傾向が見られる。

 しかし、労働が剰余価値のみならず労働力の価値をも新たに生み出すという労働価値説の立場からすれば、労働力商品概念は不可欠である。労働の多様性・階層性も、価値移転・価値形成の有無という視点から初めて理論的に把握できる。

実際に報告してみると、労働力商品概念「棄却」論の検討と、その後に続く生産過程論における多様な労働の発生および価値移転の問題とのつながりが、やや不十分である印象を受けた。ここは今後、補強が必要になる。

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