経済原論とこんにちの労働

  『資本論』ないし経済原論の内容を直接,現状分析に適用できないのはどの分野も同じだろうが,労働では特にその面,媒介が必要という側面が強い。

 すぐ目に付くのは(1)政府の労働市場への介入である。

 社会政策や社会保障などのセーフティ・ネット,労働基本権の承認など。

 次いで,(2)労使関係も変質している。

 労働組合など労働者の組織性,他方で労働者の企業定着化など内部労働市場の展開。

 さらに,技術革新が進み労働における肉体的要件の低下や中高等教育の普及によって(3)女性の社会進出が一般的になった。

 それに合わせて労働者の生活を支えてきた,これまで家庭内で担われてきた家事,育児,介護も賃労働が担うことになり,しばしば女性労働が割り当てられた。


 これらはいずれも資本主義経済の歴史的発展の中で生じた変化であるから,経済原論の内容から直接説明することはできない。それが資本主義経済の発展の中で生じる典型的な変化であれば,発展段階論によって究明されるべき事柄であろう。


 しかし,資本主義経済の発展に伴う労働の変化の意味を考察するうえで,経済原論においても,(1)労働者の肉体的精神的状態維持の必要性,(2)勤続発生の可能性,(3)家事労働など非賃金労働,非雇用の意義と性質について考察することは重要であろう。


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