経済原論初回ガイダンス

  春休みは,2月初中旬の昨年度後期の成績登録を起点とすれば結構な期間と言えるが,その間,原稿を仕上げたり,目の治療をしたり,研究会タスクフォース「労働」の提案者として論点整理したりとさまざまな業務?が入っていたという意味では 束の間の休みであった。

 今週には経済原論の初回ガイダンスが始まる。
 科目のガイダンスだから,履修方法,テストなど成績評価の方法や基準の説明は当然として,最初に科目の概要を説明する必要がある。

 ここ最近はその特徴を3点挙げて科目の紹介に当ててきた。

  1. 歴史的視点
     こんにちの経済システムを商品経済一般ではなく資本主義経済として捉える。
  2. 分配への関心
     賃金を労働者が生み出した価値の一部と捉える。
  3. 景気循環への視点
     景気循環を資本主義経済にとって必然的なものとして捉え,倒産や失業を個人責任に止めない。

 以上3点を挙げてみたが,学生から見たら経済原論は現実との係わりが見えにくい抽象論に見えているのではないだろうか。
 新古典派経済学はモデルを現実に直接適用可能な如く説くからその抽象性が際立って映っているであろう。
 しかし,自由競争モデルがこんにちの現実に直接適用と見なすことは,経済主体がその行動を自己の意思だけで制約なく自由に選択できると見なしている点で反歴史的、歴史無視と言える。
  そこで,経済原論の視点から現実にアプローチする際,どのような媒介項が必要か資本と労働,あるいは市場と政府という観点から分類図を作ってみた。
発展段階 主要産業 資本 労働
重商主義 遠隔地交易
特許状による保護
商人資本 職人労働(職種別労働組合)
自由主義 綿工(産業革命)
重商主義政策撤廃
産業資本 熟練労働(成人男性)
. 不熟練労働(婦人・児童)
工場法による規制
帝国主義
(現代資本主義)
重化学工業
大量生産技術→脱熟練
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政府の経済介入常態化 (管理通貨制度)
金融資本(株式会社)
独占企業体
不熟練労働中心→労働運動の激化(産業別労働組合)
     社会政策,社会保険
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企業定着化(内部労働市場)
     社会保障
 資本主義の歴史的発展について主要産業,資本,労働の3点だけのザックリとした見取り図だが,これも現実の経済に直接適用できない/しないことの言い訳のように映るのであろうか。

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