振り返ってみる・その1

 今後のことを考えるうえで,学会報告の趣旨を振り返ることは重要だと考える。

 発端は昨年の分科会報告だった。
 経済理論学会では,毎年,問題別分科会の1つとして「資本主義の基礎理論」を開いており,昨年は小幡道昭先生と関根順一氏(九産大)と私がそれぞれ価値論についての考えを交えた。
 小幡先生は,論文「マルクス経済学を組み立てる」(2009年)以来,主流派経済学と対峙・対話するためにはマルクス経済学の領域を明確にする,ある意味で戦線を縮小することが重要だと主張されてきた。端的には,投下労働価値説を放棄して,価値内在説と客観価値説に絞ることを提唱された。
 しかし,私には,報告準備の過程で,先生独自の価値内在説自体が対峙の障壁になっているのではないか(失礼!),との思いが強くなった。

 3月に仕上げた原稿は,その疑問を「価値と価格の混淆」として論じた。
 すなわち,技術革新一般を促し相対的剰余価値の生産に繋げる特別剰余価値規定を必ずしも技術の普及による減少一辺倒とは言えない超過利潤規定に統合している点を「価値の価格化」,諸資本の競争の基準となる利潤率の規定において流通資本や流通費用などの流通過程的要因を捨象した粗利潤概念を用いている点を「価格の価値化」と,問題提起した。




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